本記事では、採用担当者に効果的に伝わる志望動機の書き方、テクニックを紹介します。志望動機というのは、自分の書きたいように書くのではなく、企業・採用担当者が期待する内容に応えることが大切です。そのためには、「なぜその業界なのか」「なぜその職種なのか」「なぜその企業なのか」という問いに対して、「~できる(可能だ)から」「~したいから」という志望動機によって答えることを心がけましょう。
はじめに
志望動機を書くことの難しさ
就職活動において志望動機は必要不可欠です。しかし、志望動機に何を書けば良いかわからない、どのように書けば良いかわからないと悩んでいる方は多いのではないでしょうか。
私は、応募者として志望動機を書く側、採用担当者として志望動機を評価する側の両方を経験してきました。そこで、応募者の伝えようとしていることと採用担当者が知りたいことには差が生じている場合があることを理解しました。応募者にとって伝えたいことでも、採用担当者にとっては関心がない場合もあります。逆に採用担当者が知りたいことが志望動機に明記されていない場合もあります。
より採用されやすい志望動機を書くには、企業または採用担当者が知りたい観点に合わせて書いていく必要があるのです。そのためには、志望動機の役割を理解した上で、伝えるべきメッセージを明確にすることが大切です。
本記事の目的
本記事では伝えるべき2種類の志望動機と答えるべき3つの問いに基づき、志望動機の書き方を紹介していきます。この枠組みに沿って、伝えるべきメッセージを明確にすることによって、採用担当者により伝わる志望動機を書くことができると思います。
また、新卒採用と中途採用において、企業側の重視する点は異なります。そのため、志望動機に書くべき内容も異なってきます。本記事では、新卒採用・中途採用の特徴を踏まえ、何を、どのように書くべきかを解説していきます。
本記事では、基本的には履歴書やエントリーシートに書く志望動機を対象にしていますが、面接などで話す志望動機においても大きな差異はありません。面接においても文章で整理した志望動機を軸に話すことによって採用担当者に伝わる内容になるかと思います。
本記事を通じて、皆さんが「伝わる志望動機」を書けるようになり、より良いキャリアを積んでいくための一助となれば幸いです。
企業目線の志望動機の役割
新卒採用・中途採用にかかわらず、ほぼすべての企業において応募の際には志望動機が求められます。企業の採用担当者は志望動機によって次の観点を見極めています。
応募者の熱意と適性
企業の採用担当者は志望動機に基づき、応募者に熱意と適性があるかどうかを見極め、応募者が採用するに値する人材かを判断します。
熱意というのは「その企業でどうしても働きたい」という気持ちのことで、その会社でなければいけない理由が明確にあることを指します。当然ながら企業は熱意の高い人材を求めています。なぜなら熱意の高い人材ほど、仕事に対して意欲的に取り組み、企業に対する高い貢献が期待できるからです。また、早期退職のリスクも少ないと見込まれます。
適性というのは「その会社にどれくらい向いているのか」ということを示す要素です。適性には、能力と資質があります。
能力については、「求める職務を遂行することができるか」という点を見極めます。たとえば、経理の人材を募集する場合は、応募者が必要な経理の能力・経験を保有しているかを見極めます。簿記などの資格は有しているか、前職ではどのような経理業務を何年行っていたのか、といった観点で評価します。特に中途採用では、能力が重視されます。中途採用者を一から教育するのには時間もコストも必要になるからです。
資質については、「その企業・職務にどれだけ向いているか」という点を見極めます。資質というものはその人が生まれ持っている個性のようなものです。たとえば、リーダーシップを発揮して自ら主導して仕事を進めるのが得意という人もいれば、実直に与えられた仕事を正確にこなすのが得意という人もいます。その企業・職務において求められる人物像に応募者の資質が合致するかを評価します。能力だけでなく資質を併せ持つ人材は、その企業・職務において高い活躍を期待できるからです。逆に資質が合致しなければ、組織・業務にストレスを感じたり、パフォーマンスを発揮できなかったりすることがあります。
ちなみに、能力は訓練によって向上させることができるものですが、資質は基本的には変えることが難しいです。これは「良い・悪い」という問題ではなく、「合う・合わない」という問題なので、自身の資質に合わない職種・企業などについては選択肢から除外した方が良いと思います。
応募者の目的が実現できるかを見極める
また、企業の採用担当は志望動機に基づき、応募者のやりたいことがその企業・職務において実現できるかを見極めています。
応募者にとって就職・転職するというのはあくまで手段であり、何かしらの目的を持っているはずです。すべての人に共通する目的は「お金を稼ぐ」ということでしょう。ただし、「お金を稼ぐ」という目的は他の企業でも達成できることであり、その企業でしか達成できない目的もあるはずです。
たとえば、自動車メーカーに応募する人は、「新型電気自動車の企画・開発をしたい」という目的を持っているかもしれません。また、グローバル企業に応募する人は、「将来的にはヨーロッパに駐在し、働きたい」という目的を持っているかもしれません。しかし、企業によってはその目的を達成できない場合もあります。今後、電気自動車の事業を縮小するかもしれませんし、ヨーロッパに支社がないかもしれません。
このような応募者が企業・職務において実現したい目的が、本当に実現できるのかを評価し、入社後に応募者が「こんなはずじゃなかった」と後悔することのないようにします。企業側としても目的意識を持つ熱意ある人材を採用したいのですが、事業方針と大きく異なる目的や強いこだわりを持つような人材は早期離職のリスクもあるため、採用をためらうこともあります。
応募者の思考力・表現力を見極める
最後に、企業の採用担当は志望動機に基づき、その企業で最低限求められる思考力・表現力を備えているのかを確認します。この観点は志望動機の主眼ではないのですが、志望動機の文章から思考力・表現力がないと判断されてしまうと、検討の俎上にも上がらない可能性があります。
志望動機の文章から「何が言いたいのか」「なぜそう言えるのか」という点が判断できなければ、応募者を評価することができません。そのため、志望動機を論理的に構成し、内容が伝わるようにすることが求められます。
また、文章のわかりやすさも重要な要素です。当然ながら、一緒に働く人の文章がわかりにくいと、仕事の効率やモチベーションが下がる可能性があります。そのため、そのような人は積極的には採用しないでしょう。
当然、志望動機に書かれた文章だけでなく、面接においても志望動機の口頭の表現から応募者の思考力・表現力が十分かどうかを見極めています。
私も採用担当者として、面接を行ってきましたが、思考力・表現力のない人というのは、どんなに素晴らしい資格・経歴を持っていたとしても採用対象から外れてしまいます。
以降の章では、この章で紹介した「企業目線の志望動機の役割」の役割に基づき、志望動機に何を書くべきかを解説していきます。
伝えるべき2種類の志望動機
応募する企業に伝えるべき志望動機は2種類あり、「~できる(可能だ)から」と「~したいから」です。
「~できる(可能だ)から」
「~できる(可能だ)から」は、応募者の能力・資質などが、企業が求める人材の要件に合致しているということです。
企業が人材を募集する際には、職務要件を明確にして募集を行います。当然ながら企業はその職務要件に合致する人材を採用したいと考えます。以下は職務要件の例です。
職務要件の例 |
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【会社名】 株式会社〇〇 【部署名】 営業部 【役職名】 営業担当 【職務概要】 当社の主力製品である会計システムの法人営業を担当していただきます。既存顧客へのルート営業を中心に、新規顧客の開拓にも積極的に取り組んでいただきます。顧客との長期的な信頼関係を構築し、売上目標達成に貢献することがミッションです。 【具体的な職務内容】 ・既存顧客へのルート営業 ・新規顧客の開拓 ・営業戦略の立案・実行 ・社内関係部署との連携 ・営業日報の作成、報告 【必要とされるスキル・経験】 ・法人営業経験 3年以上 ・会計システム業界に関する知識 ・コミュニケーション能力 ・プレゼンテーション能力 ・交渉力 ・問題解決能力 ・PCスキル(Excel、Word、PowerPoint) ・普通自動車免許 【求める人物像】 ・高いコミュニケーション能力を持ち、顧客との信頼関係を構築できる方 ・目標達成意欲が高く、積極的に行動できる方 ・チームワークを重視し、周囲と協調性をもって仕事に取り組める方 ・変化に柔軟に対応できる方 ・当社の理念に共感し、共に成長していける方 |
応募者は志望動機において、自身の能力・経験・強みなどを伝え、職務要件に合致するということを明確にしなければいけません。求める職務が法人営業であれば、「法人営業の経験、実績が豊富で、業界の知識もあるため、即戦力として活躍できる」という点を伝えます。
新卒採用においては、明確な能力を求められることは少ないですが、募集要項には「求める人物像」という項目があり、どのような資質を持つ人材を求めているか明記されていると思います。その「求める人物像」にどれくらい自身が合致しているかを伝えることが重要になります。
企業側は重視するのは、この「~できる(可能だ)から」という観点です。多くのコスト・時間をかけて採用を行うのですから、その企業・職務で活躍し、企業に貢献してくれる人材に入社してほしいと考えます。逆に、そもそもの職務要件に合致しない場合は、採用される確率も低いため応募しない方が賢明です。
「~したいから」
「~したいから」とは、その企業で取り組みたいこと、実現したいこと、将来のビジョンを示します。企業側は、「~できるから」という観点で職務要件との一致を見た上で、応募者がその企業に対してどのような希望を持っているのかを確認します。当然ながら応募者の希望を叶えることができないこともあるため、そのような期待と現実のギャップを解消しなければいけません。
また、企業側は、何も目標を持たない応募者よりも、取り組みたいこと、ビジョンを持つ応募者の方が、職務に対して熱意を持って取り組んでくれると考えます。また、応募者がどのような活躍、貢献をしてくれるかという点も明確になります。
応募者は志望動機においてこの「~したいこと」を明確にすることが大切ですが、その業界・その職種・その企業でないと実現できないということが必要です。ありきたりな理由では、「うちじゃなくてもいいのでは」という疑問を持たれることになるからです。
志望企業で答えるべき3つの問い
上記の2種類の志望動機に関して、答えるべき3つの問いがあります。「なぜその業界なのか」「なぜその職種なのか」「なぜその企業なのか」という問いです。
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