新型コロナウイルスを経て、企業選びの軸として「希望の条件(勤務時間・休日休暇など)があるか」という点が32%と多くの人が労働時間を重視するようになりました。
その一つの観点として、残業時間がどれくらい少ないかという点も重視されます。一方で、働いていると社内の労働時間が基準となって、自分の残業時間が長いか、短いか判別がつかないこともあります。
そこで、本記事では平均残業時間、残業時間が少ない企業ランキング、残業時間の少ない企業の特徴を解説します。
平均残業時間はどれくらい?
厚生労働省の令和5年の「毎月勤労統計調査」によれば、月の平均残業時間は13.8時間です。
時系列でみると2020年は新型コロナウイルスの影響により、減少していますが、13~15時間で推移しています。全体としては減少傾向にあります。
月10時間程度の残業時間は、全体の平均と比較すると短いといえます。
業界別に見ると、「医療、福祉」が比較的に短く、2023年で7時間となっています。医療、福祉業界は人手不足できついイメージを持たれている方もいるのではないでしょうか。
業種 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
調査産業計 | 14.6 | 14.4 | 14.3 | 12.4 | 13.2 | 13.8 | 13.8 |
鉱業,採石業等 | 11.6 | 14.3 | 15.9 | 16 | 11.6 | 11.2 | 13.5 |
建設業 | 15 | 15.1 | 15.5 | 14.1 | 14.5 | 14.6 | 14.4 |
製造業 | 17.9 | 18.1 | 16.7 | 13.2 | 15 | 15.9 | 15 |
電気・ガス業 | 14.4 | 15.1 | 15.4 | 16 | 15.1 | 15.2 | 15.5 |
情報通信業 | 16 | 14.3 | 15.7 | 15.5 | 16.2 | 16.5 | 16.2 |
運輸業,郵便業 | 27.8 | 27 | 26.9 | 24.3 | 25.3 | 25.9 | 25.8 |
卸売業,小売業 | 11.6 | 11.5 | 11.7 | 10.4 | 10.8 | 11.4 | 11.3 |
金融業,保険業 | 12.7 | 12.1 | 12.6 | 13 | 12.9 | 13.2 | 13.2 |
不動産・物品賃貸業 | 14.8 | 14.4 | 13.8 | 12.3 | 14.1 | 13.9 | 14.7 |
学術研究等 | 15.2 | 15.3 | 15.3 | 14.3 | 15.1 | 15 | 15.2 |
飲食サービス業等 | 16.5 | 16.6 | 16.5 | 12 | 9.7 | 13.6 | 15.9 |
生活関連サービス等 | 11.1 | 10.7 | 10.8 | 7.5 | 8.3 | 9.6 | 9.8 |
教育,学習支援業 | 12.1 | 13.3 | 13.7 | 12.2 | 13.8 | 14.4 | 15.1 |
医療,福祉 | 6.9 | 7.1 | 7.2 | 6.2 | 6.3 | 7 | 7 |
複合サービス事業 | 7.5 | 10.4 | 9.9 | 8.7 | 8.9 | 9.5 | 10.1 |
その他のサービス業 | 14.5 | 14.5 | 13.9 | 12.2 | 13.3 | 14 | 14.2 |
医療、福祉業界で、残業時間が少ない要因としては以下のようなものが考えられます。
労働者の健康状態を重視
医療、福祉業界では、患者や被介護者の生命や健康にかかわる重要な仕事であり、労働者は常に正確な判断・行動が求められます。そのため、労働者の健康状態についても重要視されます。そのような意識があるからこそ、労働者の過度な残業も避ける傾向にあります。
交替勤務制による労働時間の分散
医療、福祉業界では24時間体制でのサービス提供を行うため、労働者が交代で勤務することが多いです。つまり、勤務時間が終了すれば、次の担当に引き継ぐことができる環境が整っており、労働時間を適切に分散することができることができます。
残業時間が少ない企業TOP100(企業規模5,001人以上)
女性の活躍推進企業データベースにて公表されている企業の平均残業時間に基づき、残業時間が少ないTOP100を掲載しています。
残業時間がゼロという企業も5社ありますが、多様な業種が含まれており、各社の努力により少ない残業時間を実現していると考えられます。
順位 | 企業名 | 業種 | 残業時間/月 |
---|---|---|---|
1 | NTTファイナンス | 金融業、保険業 | 0 |
2 | キヤノン | 電子部品・デバイス・電子回路・電気機械器具・情報通信機械器具製造業 | 0 |
3 | セイコーエプソン | その他製造業 | 0 |
4 | 日本製鉄 | 鉄鋼業、非鉄金属・金属製品製造業 | 0 |
5 | 野村総合研究所 | 情報通信業 | 0 |
6 | コストコホールセールジャパン | 卸売業、小売業 | 0.6 |
7 | オーケー | 卸売業、小売業 | 0.8 |
8 | プロテリアル | 鉄鋼業、非鉄金属・金属製品製造業 | 1.1 |
9 | セリア | 卸売業、小売業 | 1.4 |
10 | 太陽生命保険 | 金融業、保険業 | 1.6 |
11 | JCOM | 情報通信業 | 2.6 |
12 | 西友 | 卸売業、小売業 | 2.6 |
13 | SCSK | 情報通信業 | 2.9 |
14 | ダイナム | 生活関連サービス業、娯楽業 | 3.2 |
15 | 東京ガス | 電気・ガス・熱供給・水道業 | 3.2 |
16 | パナソニック インダストリー | 電子部品・デバイス・電子回路・電気機械器具・情報通信機械器具製造業 | 3.4 |
17 | 住友生命保険相互会社 | 金融業、保険業 | 3.8 |
18 | 常陽銀行 | 金融業、保険業 | 3.9 |
19 | 三井物産 | 卸売業、小売業 | 3.9 |
20 | 中外製薬 | 化学工業 | 4 |
21 | コスモス薬品 | 卸売業、小売業 | 4.2 |
22 | 髙島屋 | 卸売業、小売業 | 4.5 |
23 | 日本たばこ産業 | 食料品、飲料・たばこ・飼料製造業 | 4.5 |
24 | PALTAC | 卸売業、小売業 | 4.6 |
25 | 大塚製薬 | 化学工業 | 4.8 |
26 | 医療法人社団愛友会 | 医療、福祉 | 4.9 |
27 | 東日本電信電話 | 情報通信業 | 5 |
28 | メディカル・ケア・サービスグループ | 医療、福祉 | 5.1 |
29 | 第一生命保険 | 金融業、保険業 | 5.4 |
30 | 三越伊勢丹 | 卸売業、小売業 | 5.4 |
31 | 愛知県厚生農業協同組合連合会 | 医療、福祉 | 5.5 |
32 | 朝日生命保険相互会社 | 金融業、保険業 | 5.5 |
33 | 医療法人社団協友会 | 医療、福祉 | 5.5 |
34 | アインファーマシーズ | 卸売業、小売業 | 5.6 |
35 | イオンファンタジー | 生活関連サービス業、娯楽業 | 5.6 |
36 | イオンリテール | 卸売業、小売業 | 5.6 |
37 | アクサ生命保険 | 金融業、保険業 | 6 |
38 | シャープ | 電子部品・デバイス・電子回路・電気機械器具・情報通信機械器具製造業 | 6.3 |
39 | ニチイ学館 | サービス業(他に分類されないもの) | 6.3 |
40 | 日本アメニティライフ協会 | 医療、福祉 | 6.3 |
41 | 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 | 公務(他に分類されるものを除く) | 6.4 |
42 | 大和証券 | 金融業、保険業 | 6.4 |
43 | テルウェル西日本 | サービス業(他に分類されないもの) | 6.5 |
44 | 富士ソフト | 情報通信業 | 6.5 |
45 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 | 学術研究、専門・技術サービス業 | 6.6 |
46 | シダックスコントラクトフードサービス | 宿泊業、飲食サービス業 | 6.6 |
47 | ゆうちょ銀行 | 金融業、保険業 | 6.7 |
48 | 東芝インフラシステムズ | 電子部品・デバイス・電子回路・電気機械器具・情報通信機械器具製造業 | 6.9 |
49 | 日本保育サービス | 医療、福祉 | 6.9 |
50 | ベネッセスタイルケア | 医療、福祉 | 6.9 |
51 | まいばすけっと | 卸売業、小売業 | 6.9 |
52 | 三菱ケミカル | 化学工業 | 6.9 |
53 | かんぽ生命保険 | 金融業、保険業 | 7.1 |
54 | パーソルエクセルHRパートナーズ | サービス業(他に分類されないもの) | 7.1 |
55 | アインホールディングス | 卸売業、小売業 | 7.3 |
56 | NTN | その他製造業 | 7.3 |
57 | 日本ヒュウマップ | 宿泊業、飲食サービス業 | 7.3 |
58 | 大樹生命保険 | 金融業、保険業 | 7.5 |
59 | 資生堂 | 化学工業 | 7.6 |
60 | 資生堂グループ | その他製造業 | 7.6 |
61 | 富国生命保険相互会社 | 金融業、保険業 | 7.7 |
62 | ライクキッズ | 医療、福祉 | 7.7 |
63 | NTTビジネスソリューションズ | 情報通信業 | 7.8 |
64 | SOMPOケア | 医療、福祉 | 7.8 |
65 | ダイエー | 卸売業、小売業 | 7.8 |
66 | 日立製作所 | 電子部品・デバイス・電子回路・電気機械器具・情報通信機械器具製造業 | 7.8 |
67 | 三菱地所コミュニティ | 不動産業、物品賃貸業 | 7.8 |
68 | オープンアップITエンジニア | 学術研究、専門・技術サービス業 | 7.9 |
69 | 富士通 | 電子部品・デバイス・電子回路・電気機械器具・情報通信機械器具製造業 | 7.9 |
70 | 栄光 | 教育、学習支援業 | 8 |
71 | 日本銀行 | 金融業、保険業 | 8.2 |
72 | 快活フロンティア | サービス業(他に分類されないもの) | 8.3 |
73 | 全日本空輸 | 運輸業、郵便業 | 8.3 |
74 | 三菱商事 | 卸売業、小売業 | 8.3 |
75 | あらた | 卸売業、小売業 | 8.4 |
76 | 医療法人財団明理会 | 医療、福祉 | 8.4 |
77 | ココカラファイン ヘルスケア | 卸売業、小売業 | 8.4 |
78 | 日本トイザらス | 卸売業、小売業 | 8.4 |
79 | 三井住友海上火災保険 | 金融業、保険業 | 8.4 |
80 | イオン東北 | 卸売業、小売業 | 8.5 |
81 | アルペン | 卸売業、小売業 | 8.6 |
82 | 医療法人社団明芳会 | 医療、福祉 | 8.6 |
83 | 日本生命保険相互会社 | 金融業、保険業 | 8.6 |
84 | オリンパス | その他製造業 | 8.7 |
85 | 大同生命保険 | 金融業、保険業 | 8.7 |
86 | 北海道旅客鉄道 | 運輸業、郵便業 | 8.7 |
87 | ジョイフル本田 | 卸売業、小売業 | 8.8 |
88 | Meiji Seika ファルマ | その他製造業 | 8.8 |
89 | キヤノンマーケティングジャパン | 卸売業、小売業 | 8.9 |
90 | 国立大学法人岡山大学 | 教育、学習支援業 | 9.1 |
91 | トリドールホールディングス | 宿泊業、飲食サービス業 | 9.1 |
92 | 生活協同組合コープこうべ | 卸売業、小売業 | 9.3 |
93 | 西武・プリンスホテルズワールドワイド | サービス業(他に分類されないもの) | 9.4 |
94 | リコージャパン | 卸売業、小売業 | 9.4 |
95 | DCM | 卸売業、小売業 | 9.5 |
96 | 損害保険ジャパン | 金融業、保険業 | 9.6 |
97 | キタムラ | 卸売業、小売業 | 9.7 |
98 | SOYOKAZE | 医療、福祉 | 9.7 |
99 | リクルート | サービス業(他に分類されないもの) | 9.7 |
100 | イオン九州 | 卸売業、小売業 | 9.8 |
TOP100の企業について業種別に見ると、「鉄鋼業、非鉄金属・金属製品製造業」が0.6時間と最も少ないですが、業界の傾向というより、各社の努力による結果と考えられます。
業種 | 企業数 | 平均残業時間/月 |
---|---|---|
卸売業、小売業 | 27 | 6.6 |
金融業、保険業 | 17 | 6.2 |
医療、福祉 | 12 | 6.9 |
サービス業(他に分類されないもの) | 6 | 7.9 |
情報通信業 | 6 | 4.1 |
電子部品・デバイス・電子回路・電気機械器具・情報通信機械器具製造業 | 6 | 5.4 |
その他製造業 | 5 | 6.5 |
化学工業 | 4 | 5.8 |
宿泊業、飲食サービス業 | 3 | 7.7 |
運輸業、郵便業 | 2 | 8.5 |
学術研究、専門・技術サービス業 | 2 | 7.3 |
教育、学習支援業 | 2 | 8.6 |
生活関連サービス業、娯楽業 | 2 | 4.4 |
鉄鋼業、非鉄金属・金属製品製造業 | 2 | 0.6 |
公務(他に分類されるものを除く) | 1 | 6.4 |
食料品、飲料・たばこ・飼料製造業 | 1 | 4.5 |
電気・ガス・熱供給・水道業 | 1 | 3.2 |
不動産業、物品賃貸業 | 1 | 7.8 |
残業時間の少ない企業の特徴
残業時間が少ない企業には以下のような特徴があります。
交替勤務制の企業
医療、福祉のように交替勤務制を採用している業界の企業については残業時間が少ないことが多いです。
定時まで働き、残った作業があったも次の担当者に引き継ぐことができます。もちろん、突発的な業務が発生した場合や人員が不足している場合は残業時間が発生しますが、基本的には労働者が定時で帰れるように、業務量を調整・分散していることが多いです。
営業時間が限られている企業
生活関連サービス(クリーニング、美容、冠婚葬祭、家事代行など)のように営業時間やサービス提供の時間が限定されている企業については残業時間が少ない傾向にあります。
準備や後片付けも含めた業務量を踏まえて、営業時間を設定することで残業を発生しないようにすることができます。また、営業時間が決まっていることにより、時間外の顧客対応の必要性がなくなるため、残業時間を減らすことができます。美容院などは予約制にすることにより、営業時間に合わせて1日の業務量を調整できるため、より残業が発生しづらい仕組みをつくることができます。
BtoBの企業
法人向けに事業を展開するBtoBの企業についてもBtoCの企業と比べて残業時間が少ない傾向にあります。
基本的にはBtoBの企業の営業時間は、平日の日中で設定していることが多く、顧客対応は営業時間内で行います。また、法人向けの事業については計画があらかじめ立てられているため、突発的に業務が発生することが少ないです。計画に関しても現在のリソースに基づき、少し余裕を持たせて設定することもできるので、残業時間が発生しづらいです。
定型業務が多い企業
また、業務内容として定型業務が多い職種は残業時間が長くなる傾向にあります。
定型業務は非定型業務と比べて、作業手順が決まっており、作業時間の見積りが比較的容易です。作業のやり直しが発生することも少なく、計画通り業務が終了することが多いです。
項目 | 定型業務 | 非定型業務 |
---|---|---|
定義 | 作業手順が決まっており、繰り返し実施することが多い業務 | 作業手順が決まっておらず、都度、思考・判断のプロセスが伴う業務 |
業務例 | 事務作業・オフィスワーク 検品・梱包作業 レジ打ち 清掃 ヘルプデスク システム監視 | 戦略策定 企画 営業 クレーム対応 調査・研究開発 |
結果として、定型業務の多い職種については残業時間が少なくなる傾向にあります。もちろん定型業務の場合でも、突発的に業務が発生することもあり、その場合は残業時間が長くなる可能性もあります。
離職率が低い企業
離職率が低い企業に関しても残業時間が短い傾向にあると考えられます。
転職理由として「労働時間に不満(残業が多い/休日出勤がある)」を挙げている方は約20%程います。
第二新卒の若年層に着目すると約26.8%の人が、「残業を減らしたい、休日を確保したい」ということを理由に転職を検討しています。
このように労働者が離職する理由として、残業時間は一定の割合を占めており、残業時間が少なくなるほど離職率も低くなる可能性があります。
離職率に関しては有価証券報告書で確認することができます。有価証券報告書はEDINETより検索するこ
まとめ
以上、平均残業時間、残業時間が少ない企業ランキング、残業時間の少ない企業の特徴について説明して参りました。
近年、多くの企業が働き方改革を推進しており、全体の残業時間としては減少傾向にあります。一方で、残業時間がゼロという企業は企業規模5,001人以上ではわずかに5社という実態があります。自分自身のワークライフバランスを実現するためには、自分自身で残業時間の少ない企業を見極めることも大切になります。
是非、本記事を参考により良い就職・転職活動を行ってください。
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