ビジネスにおいて顧客や仲間を動かすためには、まずは論理的に説得することが大切です。しかし、感情を持つ人間はそれだけでは動きません。
人を動かすためには、ロゴス(Logos:論理)、エトス(Ethos:信頼性)、パトス(Pathos:情熱)という3要素を活用することが大切です。これは、古代ギリシャの哲学者アリストテレスが提唱した説得の3要素で、現代のビジネスシーンにも当てはまります。
ロゴス(Logos:論理)
ロゴスとは、事実や客観的なデータに基づき、論理的に説明することで相手を説得する方法です。商品を販売する際に、価格や機能などの情報を示して、魅力や他社の商品との優位性を示すことが該当します。
ビジネスにおいては、第一にこのロゴスにより説得することが大切です。「うちの商品は他社よりも良いよ」と言われても客観的なデータに基づかなければ、合理的な判断はできません。そのため、価格や機能などの優位性をデータで示して、相手の意思決定を促します。
一方で、人間には大切にしたい価値観や感情があります。どんなに論理的に正しい場合でも、感情的に受け入れられないことがあります。そのため、エトスやパトスに働きかけることが大切になります。
エトス(Ethos:信頼)
エトスとは、人柄・信頼に基づいて、説得する方法です。この道10年のベテラン社員が語る場合と新米社員が語る場合とでは、当然ながらベテラン社員の方が信頼を置くことができます。また、清潔な身なりをしている営業マンとだらしない服装をしている営業マンとでは、前者を選択する人が多いでしょう。
このような信頼を勝ち取るためには、自身の実績や資格を示すことで、専門性をアピールすることが大切です。また、約束を守る、正直に答える、謙虚な姿勢を示す、といった日常的な行動が信頼につながります。
パトス(Pathos:情熱)
最後にパトスとは、情熱によって相手を説得することです。たとえば、淡々と商品の説明をする営業マンよりも、お客様に対する思い、商品に対する自信を熱く語る営業マンとでは、後者の方が応援したい、力になりたいと思う人が多いと思います。
ただし、独りよがりの熱意を語っても相手を動かすことはできません。相手に共感をしてもらうことが大切になります。極端な例ですが、環境を破壊する商品を世界に広めたいという熱意を語ってもほとんどの人が共感することはありません。一方で、環境を良くする商品を広めたいという熱意には多くの人が共感することができます。共感を得るためには、相手の利害を理解した上で、情熱を伝える必要があるのです。
効果的な説得のためのポイント
相手を説得するためには、相手が何を重視しているかを把握することが大切です。
知識のない人はロゴスよりもエトスを重視する場合があります。いかに論理的に説得しても知識がないと正確に理解ができず、よりわかりやすい実績や人柄といった要素を重視するからです。たとえば、パソコンなどを購入する際、詳細なスペックは理解できなくても、有名メーカーが製造しているということで購入する場合もあります。
限られた予算の中で意思決定をしなければいけない人は、ロゴスを重要視する傾向にあります。たとえば、1億円という予算でシステムの導入を検討している担当者は、確実に成果を生み出すシステムを選定しなければいけません。そのため、客観的なデータや成功事例に基づき判断を行います。
逆に自分自身が決裁権を持つ社長などは熱意を重視する場合があります。確実なリターンはなくとも、自分の興味や楽しみのため、事業に投資したり、新規事業を始めたりします。
このように相手の重視するポイントに対して、積極的にはたらきかけることで、効果的な説得を行うことができます。
まとめ
AIやデジタルが普及し、ロゴスによる判断は人間が担う必要はなくなってきています。一方で、最終的な意思決定は人間が行います。そこでは、論理だけではなく感情に働きかける必要があるのです。
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