データはApple to Appleで比較せよ

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定量分析を行う際は、データを比較して考えることが基本となります。比較をしなければそれが「大きいのか、小さいのか」「高いのか、低いのか」「良いのか、悪いのか」判断することができないからです。

しかし、何でもデータを比較すれば良いというものではありません。たとえば、「1リットル180円の牛乳」と「500ミリリットル100円の牛乳」ではどちらが安いでしょうか。単純に価格だけ見れば、「500ミリリットル100円の牛乳」ですが、量が違うため正確な評価とは言えません。厳密な比較をするには、同量の牛乳で比較する必要があります。

本記事では、データ比較において必要なApple to Appleを実例を交えながら解説していきます。

デキる社員の100のコンピテンシー」では、マインドセットとスキルセットに分けて、どのような時代、どのような場所においても通用するコンピテンシーを紹介しています。

マインドセットでは、仕事に対する考え方や信念、価値観などの、思考や行動の基盤となる心の持ち方を解説しています。また、スキルセットについては、仕事を遂行するために必要な能力・技術を解説しています。

目次

Apple to Appleの原則

データを比較する場合は、同種のもの、同じ条件のものを比較する必要があります。これを英語の慣用句で”Apple to Apple”と言います。

ビジネスシーンでは、製品やサービス、企業を比較する際には、データの定義、測定条件などをできる限り合わせた上で、比較することが重要になります。もし、異なる定義、条件で比較してしまうと、誤った結論を導いてしまう可能性があります。

Apple to Appleでの比較の例

売上の比較

たとえば、「スーパーマーケットAの売上が低い」という仮説に基づき、スーパーマーケットAと他のスーパーマーケットを比較する際に、どのようなスーパーマーケットと比較するかを考えます。スーパーマーケットAに関する条件は以下の通りです。

項目スーパーマーケットA
期間2023年1月~2023年12月
所在地東京都港区
1日の営業時間9:00~22:00
店舗面積600坪
売上10億円

この場合、スーパーマーケットAと比較するスーパーマーケットはBか、Cいずれが適切でしょうか?

項目スーパーマーケットBスーパーマーケットC
期間2023年1月~2023年12月2023年4月~2023年12月
(2023年4月新規開店)
所在地東京都港区東京都練馬区
1日の営業時間9:00~22:3024時間営業
店舗面積650坪300坪
売上20億円5億円

この場合、期間、所在地、1日の営業時間、店舗面積がスーパーマーケットAに近い、スーパーマーケットBを比較対象として選択するべきです。結果として、ほとんど同じ条件のスーパーマーケットBと比べて売上が少ないということがわかります。店舗を運営するやり方に何か原因があるかもしれません。

一方で、スーパーマーケットCは、期間、所在地、1日の営業時間、店舗面積がスーパーマーケットAと異なるため、比較対象としては適切ではありません。それぞれの条件の違いが売上に対して影響を与えている可能性があるからです。

  • 異なる売上期間での比較⇒期間が短いほど売上が少なくなる可能性がある
  • 異なる所在地のスーパーマーケットと比較⇒地域の人口、平均収入などが客数、購買単価に影響を与える可能性がある
  • 異なる営業時間のスーパーマーケットと比較⇒営業時間が長いほど売上も大きくなる可能性がある
  • 異なる店舗面積のスーパーマーケットと比較⇒店舗面積が大きいほど商品数、収容客数も大きくなるため、売上も大きくなる可能性がある

これでは、スーパーマーケットAの売上が低いか、また、どのような要因で低くなっているのかを分析することができません。もし、同種、同条件の比較対象が見つからない場合、売上期間や店舗面積の違いであれば、売上を月間売上にしたり、1坪当たり売上に換算することで、条件を揃えることができます。

残業時間の比較

「Aさんの残業時間が長い」という仮説に基づき、Aさんの残業時間を他の社員と比較する際に、どのような社員と比較するかを考えます。Aさんの残業時間に関する条件は以下の通りです。

項目Aさん
部署営業部
所定労働時間1日8時間
6月の勤務日数20日
6月の残業時間23時間

この場合、Aさんと比較する社員はBさんか、Cさんいずれが適切でしょうか?

項目BさんCさん
部署営業部開発部
所定労働時間1日8時間4時間(パートタイム)
6月の勤務日数20日15日
6月の残業時間15時間4時間

当然ながら、Aさんと部署、所定労働時間、勤務日数が同じBさんと比較すべきです。結果として、「Aさんの残業時間はBさんよりも長い」という結論が得られます。

一方で、Cさんの場合、Aさんと部署、所定労働時間、勤務日数が異なるため、これらの条件が残業時間に影響を与えている可能性があります。結果として、Aさんの残業時間がCさんよりも長い、短いか、正確に判断することができません。

  • 営業部とは異なる開発部と比較⇒業務内容によって残業の発生しやすさが変わる可能性がある
  • 1日4時間勤務のパートタイマーと比較⇒勤務時間が短い方が残業時間も短い可能性がある
  • 6月の勤務日数が15日の社員と比較⇒勤務日数が少ない方が残業時間も短くなる可能性がある

そのため、このケースではAさんとできるだけ条件の近い社員Bさんと比較することで、Aさんの残業時間について正確に理解することができます。

もし同条件の比較対象がいなければ、指標を変えることで同条件での比較を行うことができます。たとえば、以下の条件のDさんと比較する場合、勤務日数がAさんとは異なるため、1日当たりの残業時間に換算します。

項目AさんDさん
部署営業部営業部
所定労働時間1日8時間1日8時間
6月の勤務日数20日15日
6月の残業時間23時間20時間
1日当たりの残業時間1.15時間(23時間/20日)1.3時間(20時間/15日)

Aさんの1日当たりの残業時間は1.15時間(23時間/20日)、Bさんの1日当たりの残業時間は1.3時間(20時間/15日)となり、Dさんの方が長いという結論が得られます。

まとめ

このようにデータを比較する際は、できる限り同種のもの、同条件のものを比較することが重要です。そのためには、得られたデータにすぐに飛びつくのではなく、データの定義、データの測定方法を正確に理解し、本当に使えるデータか吟味することを心がけましょう。

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この記事を書いた人

コンサルティングファームにおいて様々な業界で経験を積み、人材領域で業界の知識を活かしたく、本サイトを運営しております。すべての人が適職で活躍できるような社会を実現するため情報提供をして参ります。

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