週休3日制で年収が下がる!?週休3日制の種類、メリット・デメリット、導入企業例を解説

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トヨタ自動車が、週休3日の勤務制度を導入する検討を開始したことが話題となっています。国内のトップ企業が週休3日制を導入することで、他の企業も追従していくのではないかと考えられます。

日本経済新聞
トヨタ「週休3日」選択可能に 年内にも、賃金水準維持 - 日本経済新聞 トヨタ自動車は、社員の希望に応じて週休3日にできる勤務制度を導入する検討を始めた。多様な働き方を認めることで、優秀な人材確保などにつなげる狙い。休んだ日の労働時...

週休3日制の最大のメリットは休日が増えるということですが、年収が減ってしまうのではないか、業務負担が増えるのではないかという懸念もあるのではないでしょうか。

そこで、本記事では週休3日制の種類、メリット・デメリット、導入企業例を解説して参りますので、就職・転職の参考にしてみてください。

目次

週休3日制とは

週休3日制とは、1週間の休日が3日となる制度です。

多くの場合は、土日が休日としている企業が多いと思いますが、土日のほか平日に1日の休日を増やすことが一般的です。

休日に関して、企業は少なくとも毎週1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日を与えることを法律で義務付けられていますが、週休3日制は法律によって義務付けられているわけではありません。現状、一部の民間企業で導入されていますが、国家公務員・地方公務員においても検討が進められています。

週休3日制の導入状況

厚生労働省の就労条件総合調査によれば、週休3日制を含む完全週休2日制より休日日数が実質的に多い制度を採用している企業割合は2023年調査では7.5%でした。調査年により変動はありますが、全体として週休3日制などを導入している企業割合は増加していると考えられます。

「完全週休2日制より休日日数が実質的に多い制度」を採用している企業割合
厚生労働省の就労条件総合調査

週休3日制を導入する企業が増加している背景として、以下のようなものがあります。

ワークライフバランスの重視

価値観の多様化により、仕事だけでなく育児・介護やプライベートの時間を重視したいという人が増加しております。そのような人にとっても働きやすい環境を提供するために、週休3日制を導入しています。企業にとっては従業員の満足度を向上させることで、仕事に対するモチベーションや生産性を向上させるということも狙いとしてあります。

また、そのような働きやすい環境をアピールポイントとして採用競争力を向上させる狙いもあります。

兼業・副業・ボランティアなどの他の活動

また、兼業・副業を解禁する企業が増加していることも週休3日制の導入を加速させています。

企業としては、週休3日制で増えた休日を兼業・副業のために費やしてもらい従業員がスキルアップすることも期待しています。兼業・副業で身につけた知識・スキルを本業にも還元してもらうことで、業務品質や生産性の向上を図る狙いもあります。

リカレント教育・リスキリング

また、増えた休日を用いて大学、専門学校、ビジネススクールに通い、従業員がスキルアップすることも期待しています。このような社会人による学びなおしをリカレント教育・リスキリングといいます。

週休2日の場合、土日に通学するということは難しい場合もあるため、平日に休日を設けることで、通学や学習の時間に充ててもらうという狙いがあります。リカレント教育・リスキリングにより得た新しい知識・スキルを本業でも活用してもらうという期待もあります。

週休3日制の種類

週休3日制には、給与維持型、給与減額型、総労働時間維持型の3種類があります。土日以外に水曜日を追加で休日とすると、それぞれの勤務時間は下図のイメージとなります。

週休3日制の種類

給与維持型

給与維持型は、1日の所定労働時間は変わらず、休日を増やし、給与を維持する方法です。あまり採用している企業は多くないようです。

従業員目線では、純粋に労働時間が減少するだけなのでメリットが多いですが、その分生産性を高め、週5日分の成果を出すことが期待されます。

企業目線では、1人1人の業務量を調整したり、生産性を上げるための工夫が必要となります。また、すべての人に認めてしまうと業務が停滞するリスクもあるため、どのような人材に週休3日制を認めるか基準を策定する必要があります。また、他の従業員が不平等に感じるリスクもあるため、すべての社員にとって納得感のある制度に設計する必要があります。

給与減額型

給与減額型は、1日の所定労働時間は変わらず、休日を増やしますが、その分給与を減らす方法です。

従業員目線では、給与が減少しますが、休日をつくり、別の活動やリフレッシュに使うことができます。期待されるパフォーマンスも従前と変わりはありません。

企業目線では、労働力が減少する分、人件費も抑えることができるので、その分を新たな人材採用に使用したり、機械などの設備投資に使用することで生産量が低下しないようにします。

総労働時間維持型

総労働時間維持型は、休日を増やす分、一日の所定労働時間を増やし、総労働時間は変更しない方法です。給与についても労働時間が変わらないため、維持されます。例えば、8時間×5日で働いていたものを10時間×4日に変更して総労働時間は変わらないようにします。

この方法は、基本的には変形労働時間制を利用して、1日当たりの法定労働時間が8時間を超過しても問題ないように制度が設計されています

従業員目線では、1日の所定労働時間が長くなりますが、休日をつくり、別の活動やリフレッシュに使うことができます。一方で、1日の所定労働時間が長くなる分、就業前や終業後の活動時間は減少します。

企業目線では、労働力は減少しないので業務量を調整する必要もなく、導入がしやすいです。一方で、1日の労働時間が長くなることにより、疲労が蓄積し、業務の生産性が低下してしまうリスクがあります。

週休3日制のメリット

従業員目線のメリット

ワークライフバランスの向上

休日が増えることにより、育児・介護・プライベートなどにより多くの時間を使うことができます。また、休日をリフレッシュに使うことでストレスを軽減することもできます。

兼業・副業による収入増加・スキルアップ

休日を兼業・副業に用いることで、副収入を増やすことができます

平日のまとまった時間を確保できるため、兼業・副業の選択肢の幅が広がり、より高収入の仕事も選択することができます。また、収入だけでなく、本業とは異なる領域の業務を経験することでスキルアップも実現できます。

学びなおしの実現

また、大学、専門学校、ビジネススクールに通い、自分の興味・関心のある新しい分野について学ぶこともできます。

人生100年時代といわれる現代においては、一つの分野での仕事や活動だけで生涯を終えるということは少なくなっています。そのため、新しい分野に挑戦するための準備として学びなおしをする人が増えています。

増えて休日を学びなおしの時間に充てることで、将来的なキャリアの幅を大きく広げることができます。

企業目線のメリット

離職率の低下・採用力の向上

週休3日制の選択肢を設けることで、従業員に対して柔軟な働き方を提供することができます。結果として、従業員の満足度が向上し、離職率を低下させることが期待できます。また、既存の従業員だけでなく、転職希望者に対しても働きやすい職場としてアピールすることができ、他社に対して採用力を高めることも期待できます。

生産性の向上

また、労働日数が減ることで、限られた日数で成果を創出しようとするやる気が高まり、結果として業務の生産性が向上することが期待できます。また、休日をリフレッシュに充ててもらうことでストレスを軽減し、仕事に対するモチベーションを維持することができます。

スキルアップによる業務品質の向上

休日を兼業・副業、学びなおしなどに活用してもらうことで従業員のスキルアップを期待できます。スキルアップの結果、新しい事業領域に取り組んだり、既存の業務品質を向上させたりすることができます。

コストの最適化

出勤日を減らすことにより、オフィスの光熱費、通勤手当などの経費を削減することができます。

また、業務量に対して従業員数が多すぎる場合、各従業員の業務量を調整し、人件費を減らすことができます。従業員を解雇することは合理的な理由がなければ難しいですが、週休3日制であれば従業員も納得の上で、業務量を調整することも可能です。

週休3日制のデメリット

従業員目線のデメリット

収入が減る可能性がある

上記で紹介した給与減額型の場合、労働時間の減少に伴い、給与も減少する可能性があります。週休3日制の制度を利用する前にどのような種類のものかを事前に確認する必要があります。

業務負担が増加する可能性がある

週休が3日になっても業務量や求められる成果に変わりがなければ、1日当たりの業務負担は大きくなります。会社と相談し、業務量を減らすか、生産性を向上させるための取組が必要となります。

企業目線のデメリット

生産性が低下するリスクがある

出勤日が減少することで、1日当たりの労働時間が長くなる場合、長時間労働による疲労・ストレスの蓄積で、従業員の生産性が低下するリスクがあります。週休3日制の導入に合わせて、従業員の負担を軽減するための取組を推進することが望ましいです。

追加人員確保が必要

週休3日制により、労働力が減少すると、それを補てんするため追加で人員を確保する必要があります。人材を確保できない場合、業務の成果や品質が低下する可能性があります。例えば、顧客の問い合わせやクレームに対して対応できなくなったり、打ち合わせに必要な人員を招集できなかったり、業務への支障が発生するリスクも考えられます。

勤怠管理や給与体系の見直しが必要

週休3日制の導入に伴い、週休2日制の従業員、週休3日制の従業員双方に合わせた勤怠管理・給与体系のルールを整備する必要があります。また、それぞれの従業員が不平等を感じないような制度設計を行う必要があります。

週休3日制の導入企業例

以下、週休3日制の導入企業例を紹介します。基本的には、給与減額型か総労働時間維持型の2種類に分類されます。

SOMPOひまわり生命保険株式会社

SOMPOひまわり生命保険株式会社では、2017年9月に「妊娠および育児・介護にかかる週4勤務制度」、2018年7月に「再雇用週4勤務制度」を導入しています。

妊娠および育児・介護にかかる
週4勤務制度
再雇用週4勤務制度
種類給与減額型
対象者妊娠中の社員(配偶者が妊娠中の社員も対象)

育児中の社員(子が小学校3年生学年末までの期間)

介護中の社員(介護終了まで)
再雇用社員(取得事由は問わない)
労働時間週5勤務では週35時間、週4勤務では週28時間に減少
給与週5勤務の4/5

株式会社東邦銀行

株式会社東邦銀行では、2017年10月に選択的週休3日制(週4勤務)が導入されています。

選択的週休3日制(週4勤務)
種類給与減額型
対象者全従業員・パートが対象で、妊娠・子の養育・介護等の事由を有する者
労働時間週5勤務では週40時間、週4勤務では週32時間に減少
給与勤務日数、時間の設定に応じて、定例給与乗率が設定

SMBC日興証券株式会社

SMBC日興証券株式会社では、社員の自律的なキャリア形成支援、年代ごとに顕在化する育児・介護ニーズや自身の健
康状態などに対応できる柔軟な働き方の選択肢の提供を目的に、「週3日・週4日勤務制度」を2020 年4月に導入しております。

週3日勤務制度週4日勤務制度
種類給与減額型
対象者欠勤・休職中でない60歳以上の社員

介護理由のある40歳以上の社員
欠勤・休職中でない40歳以上の社員

育児・介護理由のある入社4年目以降の社員
労働時間通常勤務時の60%通常勤務時の80%
給与通常勤務時の60%通常勤務時の80%

リコー株式会社

リコー株式会社は、ワーク・ライフにあった多様な働き方の実現のため、育児・介護以外の事由においても短い勤務時間の働き方が出来るショートワーク制度を2018年に導入しています。

ショートワーク制度(週4勤務)
種類給与減額型
対象者自己啓発、ボランティア、セカンドライフ準備、介護、育児、副業を事由とする従業員
労働時間週5勤務では週37.5時間、週4勤務では週30時間に減少
給与短縮した時間分は控除

株式会社USEN-NEXT HOLDINGS

株式会社USEN-NEXT HOLDINGSでは、グループ全体の社員を対象に、コアタイムを設けないスーパーフレックスタイム制度を導入しております。1か月の総労働時間の中で、自身が働く時間を調整し、「非稼働日」を設定することで、週休3日が実現可能となります。

スーパーフレックスタイム制度
種類総労働時間維持型
対象者グループ全体の社員
労働時間総労働時間は通常勤務と同様
給与通常勤務と同様

株式会社ZOZO

株式会社ZOZOは、働き方の多様性を高めるため、変形労働時間制を活用した選択的週休3日制を2021年4月に導入しています。

選択的週休3日制
種類総労働時間維持型
対象者ホスピタリティ本部の社員(カスタマーサポートを主業務とする)
労働時間総労働時間は通常勤務と同様
1日8時間×5日を基本とし、1日10時間×4日も選択可能
給与通常勤務と同様

株式会社みずほフィナンシャルグループ

株式会社みずほフィナンシャルグループでは、社員本人の希望により就業しない日を1日または2日設定することを可能とする制度を2020年に導入しています。

週休3日・4日制度
種類給与減額型
対象者全社員を対象に、利用に関しては事由を問わない
労働時間通常37.5時間(7.5時間×5日)が、30時間(7.5時間×4日)または22.5時間(7.5時間×3日)に減少
給与就業しない日の給与は支給しない

佐川急便株式会社

佐川急便株式会社は、ドライバー確保を目的として週休3日制度を2017年に導入しています。

週休3日制度
種類総労働時間維持型
対象者ドライバー
労働時間総労働時間は通常勤務と同様
1日8時間×5日を基本とし、1日10時間×4日も選択可能
給与通常勤務と同様

まとめ

以上、週休3日制の種類、メリット・デメリット、導入企業例を解説して参りました。

週休3日制にはワークライフバランスを向上させたり、副業・兼業に挑戦したりと自由に時間を使うことができるのが最大のメリットです。人生100年時代と呼ばれる現代においてはセカンドライフに向けて様々なことにチャレンジすることが、人生を充実させることになります。

もし、週休3日制に興味をお持ちの方は、本記事も参考に今後のキャリアを検討してはいかがでしょうか。

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この記事を書いた人

コンサルティングファームにおいて様々な業界で経験を積み、人材領域で業界の知識を活かしたく、本サイトを運営しております。すべての人が適職で活躍できるような社会を実現するため情報提供をして参ります。

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